2012年5月16日水曜日

成果主義導入の問題点は「ビジョンやリーダーシップ」にある

成果主義導入の問題点として、1.総額人件費を抑えるために利用する目的のはき違え、2.目標管理制度により、安全志向、短頭志向に陥り、仕事の質やビジョンといった抽象的な領域の軽視、が生じている。しかし、そもそも成果主義を論じるならば、制度的な弊害以前に経営者の資質が聞かれなければならない。

「ビジョンのない経営者が多すぎます。このビジネスをどうしたいかと尋ねても、”儲かるようにしたい”なんて答えしか返せない。そんなのはビジョンじやありません。いったいどんな顧客に対してどんな価値を提供したいのか、どんな人が必要で、どう働いてもらいたいのか」と、高橋教授は経営者を厳しく叱責しています。

成果主義を導入するならば、まず経営者がしっかりとしたビジョンやリーダーシップを持たなければなりません。さらに、経営者としての評価を自ら厳しくしていかないと、うまく機能するはずがないのです。成果主義に従業員のモチベーションを高める効果がまったく無いとはいいませんが、さまざまなリスクとも背中合わせです。富士通の秋草発言は、それを示しています。

富士通は成果主義賃金のパイオニア企業だった

富士通は成果主義賃金のパイオニア

さきほど成果主義賃金のことに触れましたが、富士通は成果主義導入の先駆的企業です。年功序列を廃して、過去の実績や結果から決まった給料や年俸制、職務や責任に基づく職務給、それに期首に上司との面談で申告した目標達成度を計る目標管理制度などを組み合わせて、賃金、一時金、役職を決定しています。

一九九三年に成果主義を導入して、九三年から九八年上期までは成果主義を社内の共有規則とする第一のステージ。九八年下期から二〇〇〇年までが目標を高く設定してそれをやりぬくハイパフォーマーを増やす第二ステージ。二〇〇一年からは第三ステージで達成重視が低くなってきたので、目標を高く置き、その達成度でなく成果そのものを評価するつもりだ、と同社の総務・人事担当役員は説明しました。

さきほどの秋草発言とからめれば、すでに10年近く成果主義を導入し、第三ステージに進んでいるにもかかわらず、従業員が働かないと社長は認識していたことになります。成果主義が誤りなのか、社長をはじめとした経営陣が誤っているのか、どちらしても根本的な問題です。場合によっては社長以下役員の退陣という事態に発展してもおかしくなかった。しかし富士通と秋草社長は何もしませんでした。