2015年1月7日水曜日

自治体と企業に向けられる協カヘの圧力

アメリカ側か、周辺事態協力に自衛隊の船舶検査活動を強く求める理由は、「テロとの戦い」において国連海洋法を超越した不審船の洋上阻止PSI(Proliferation Security Initiative 「拡散に対する安全保障構想」)を実行する機会とみなしているからである。船舶検査活動には、周辺事態・船舶検査活動・PSIを一体化させるねらいが与えられている。念頭に「PSIを北朝鮮船舶に適用」ということが描かれているのはまちがいない。大量破壊兵器の拡散防止が緊急課題であるにせよ、一方、国際法の原則である「海洋自由原則」を無視して、アメリカ主導のもと、第三国船舶を「大量破壊兵器」「関連物資」「関連技術」輸送などの容疑で自由に臨検=乗船検査することは、「単独行動主義」が海洋秩序の根幹を破壊する行為の容認とみなされかねず、国際社会は全面合意していない。

しかし、船舶検査活動法が制定されると、海上自衛隊は、周辺事態における主要な訓練事項として毎年の「海上自衛隊演習」に組み込むようになるまた二〇〇四年、アジアではじめて日本が主催したPSI合同訓練「チームーサムライ」には、海上保安庁とともに海上自衛隊艦艇も「調査・研究」の名目で参加した。二〇〇五年シンガポールで行われた東南アジア規模の訓練にも護衛艦「しらね」とP‐3C哨戒機二機が派遣されている。中国と韓国は、どちらの訓練も参加を見送った。「船舶検査活動法」の成立により、「周辺事態法」につづき、二つ目の「ガイドライン関連法」が整備されたことになる。

周辺事態法は、日本の国外に自衛隊の活動領域を広げたばかりではない。国内に向かっても「地域と企業」に対して安保特例法にもとづく規制と制限を持ちこんだ。その第九条は、「関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、地方公共団体の長に対し、その有する権限の行使について必要な協力を求めることができる」と定める。関係行政機関の長とは、防衛庁など内閣の主務大臣を指す。同じく第九条二項には、「前項に定めるもののほか、関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、国以外の者に対し、必要な協力を依頼することができる」と国以外の者、すなわち民間企業への協力依頼ができることも規定している。

この条文は、新ガイドラインにあった「地方公共団体が有する権限及び能力並びに民間が有する能力を適切に活用」する、という内容を実行にうっすための条文である。これが「有事法制」制定へのはじまりとなった。政府が、全国の自治体に送った内閣安全保障・危機管理室、防衛庁、外務省連名になる文書「周辺事態安全確保法第九条(地方公共団体・民間の協力)の解説」(二〇〇〇年七月二五日付)によると、次のような協力事項があげられている。地方公共団体の長に求める協力項目の例では、地方公共団体の管理する港湾施設の使用、地方公共団体の管理する空港施設の使用、人員および物資の輸送に関する地方公共団体の協力、地方公共団体の有する物品の貸与等(通信機、事務機器、公民館、体育館等の施設)公立医療機関への患者の受け入れなど。

また第二項関係-民間に対して依頼する項目の例では、人員、食料品、医薬品等を米軍や自衛隊の施設・区域と港湾・空港の間で輸送すること、傷病者采軍、自衛隊、避難民、救出された邦人等)を病院まで搬送すること、米軍や自衛隊の廃油、医療関連の廃棄物について関係事業者の処理に係る協力、民間企業の有する倉庫や土地の一時的な貸与などが協力項目例とされている。「解説」文書は、これらの協力が強制されるものでないといいつつ、「権限を適切に行使することが期待される」「(政府が)調整を行なうことはあり得る」などと上意下達の可能性をにじませている。これら「地域と職場」の動員につながる協力要請に加え、国民の目と耳をふさぐ措置も打ち出されていた。