2016年4月4日月曜日

無意識下の知覚の役割

心理学者はさらに一歩進んで、知覚的防衛体制という、それ自体すでに複雑な心理的過程を合むために、明確化できなかったサブ・セプションのプロセスを、純粋に実験的な事態に持ち込むことによりいっそう単純化して、そのしくみを明らかにしようとした。

そのために、用いた単語はすべて実生活を離れた無意味綴りのみ材料に選び、またその字数も完全に等しくした。その無意味綴りの単語二十個のうち半分は、実験に先立って、十数回にわたって電気ショックで条件づけされた。

条件づけとは、それらの単語が呈示されるたびごとに、被験者には軽い電気ショックがかけられ、その結果、その単語が呈示されると、電気ショックを伴わないでもそれだけで、被験者は電気ショックをかけられた時と同様の状態になることを意味する。実際には、それは顕著な皮膚電気反射の発生で示された。

さて、被験者は、さきほどの実験と同様な方法で、無意味綴りの単語の認知閥を測られたわけであるが、その際、同時に皮膚電気反射の大きさも測定した。結果は、やはり、無意識下の知覚というものの存在を明瞭に示すものだった。

というのも、無意味綴りを被験者が正しく読みとることができるはるか前に、皮膚電気反射のほうは、電気ショこと、そうでない単語とを明瞭に区別していたからである。つまり前者に対しては、後者に対するよりも明らかにより大きな反応をおこしていたのである。

以上の諸例を総合していえることは何だろうか。それは、私たちの無意識下の知覚と、意識下の知覚とは根本的にその目的が異なるということである。無意識下の知覚は、我々の生物学的ないし社会的自我を危険な刺激より遠ざけ、またその存在に必要な最少限度の要求を充たすための役割を果たす。

一方意識的な知覚は、一層高度の知的なあるいは社会的な必要を充たすために、複雑な情報の処理にあたるわけである。これら二つの知覚が補い合って、初めて知覚はその機能を完全に果たすことができるといえるのである。