2015年10月3日土曜日

自然のもつ多様多彩な仕組み

今日、共生は、双方が利益を得るかたちの「相利共生」、一方だけが利益を得る「片利共生」、そして「寄生」があり、それぞれの形態内容についても、昆虫や植物、魚類、動物、菌類、さらには腸内共生など、さきの「擬態共生」に至るまで非常に多彩な研究が進められている。しかし、前掲の石川統氏によれば、「異なる生物が共に暮らす」という現象の本質が明らかになるにつれて、最近では、共生の定義がふたたび、A・D・ヘイリーの当初の説に戻りつつあるのだという。

「相利共生」「片利共生」「寄生」「擬態共生」といっても、その間に明確な区別をつけにくい例が自然界には多く存在する。ただ、しかし「異なる生物が共に暮らす」ことが共生の意味だとしても、そのプロセスはきわめて複雑多様であり、すでに見たように、長い期間にわたってのまさに関係を通じて形成された現象であることを忘れてはなるまい。

ともあれ、人間社会に引きつけて共生を考えようとする場合、オプテイミステイックにとらえるか、それともペシミステイツクにとらえるかは、人によってさまざまであろう。しかし、われわれは、生命の歴史がけっして悲劇的な方向をたどってきたのではなく、たとえ環境が生命にとって大きな災害をもたらすように働いたときでさえ、最悪の事態をかわし、うまく適応して活路を見いだし、新しい発展を遂げたという事実に多くを学ぶ必要があろう。

「エコロジカルーオプテイマイゼーション」という言葉には、楽観的という意味とともに効果的に活用するという意味もふくまれている。自然のもつ多様多彩な仕組みを学び、それを効果的に最大限に活用するために総意を結集することが、いまほど必要とされていることはない。本書の主題である「エコパラダイム」も人間社会でいう批判的総合化を目指すものであり、こうした文脈のなかで活用される理念でなければなるまい。