2013年3月30日土曜日

アマチュア写真家

数あるコンテストの中でも日本最大規模を誇る「富士フイルムフォトコンテスト」は、毎年、全国のアマチュア写真家から作品を募っていますが、四十回目を迎えた二〇〇〇年は六万二千点が寄せられたといいます。入選作品は写真集にまとめられていますが、日本を訪れる外国人旅行者の中には、わざわ芦この写真集を日本土産に買って帰る人もいるそうです。全国から集まった六万点を超す応募作品の中から選ばれたものですから、日本の現代の姿を写した、鮮度の高い映像であるのは間違いありません。これをお土産に選んだ人に、心から敬意を表したいと思います。

写真教室や同好会に入れば、たいてい仲間うちの作品発表会がありますが、個人で写真展を開こうと思うとなかなか大変です。会場の問題もさることながら、個展となればそれなりの統一テーマが必要ですから、点数を揃えるだけで、どうしても数年はかかります。個展をする気などなくても、自分の好きなテーマを見つけて撮っているうちに、個展を開くチャンスが舞い込むことも、ないわけではありません。そんなときは、思い切ってチャレンジしてみることです。多くの人に作品を見てもらって意見を聞くことは、勉強にも励みにもなるからです。もし個展を開きたければ、フォトサロンやギャラリーの情報が載っている小雑誌(「フォトステージ」カメラ情報社)もあります。

勉強といえば、写真展も参考になります。筆者も新宿や銀座に出たときは、できるだけ多くの写真サロンやギャラリーをのぞくようにしています。そんな折、フォトハイキングという言葉を耳にしました。富士写真フイルムが、四月~十月の日曜日と休日に、全国各地で開催している撮影会です。一回の参加費用は三千円前後から食事付きまでとさまざまですが、「地元を撮ろう」と銘打ったこのフォトハイキングは、室内でむずかしい講義を聞いているよりずっと楽しく、勉強にもなるということで、年を追うごとに女性の参加者が増えているそうです。

先生といっしょに歩きながら具体的な被写体を探し、使用するレンズやフレーミングなどについての指導を受けるという新しいかたちの撮影会で、教室では恥ずかしいと思って聞けなかったことも、開放感から気軽に質問ができるということで、いまやいちばんの人気だそうです。東京では、○○サロンと名がつくのが、フィルムやカメラの大手メーカーやカラーラボが運営する写真ギャラリーです。出展希望者はプロ、アマを問わず、作品で審査されます。他のギャラリーも似たりよったりのシステムです。

出展が決まると、ギャラリーによっては、専属のディレクターが写真展のメッセージづくりの相談に乗ってくれるところもあります。真剣に自分の方向を見つけたいと思っている人は、このような作家を育てようという意欲のあるギャラリーに作品を持ってゆき、チャレンジをしてみるのもいい勉強になります。展覧会場は銀座や新宿にかぎりません。筆者の住んでいる街にも、銀行のロビーや喫茶店を兼ねたギャラリーがいくつかあります。他人が撮った古い写真も自分にとっては目新しい、ということは、自分には見飽きた写真でも他人には新鮮に見えるということでもあります。

アマチュア写真家の写した写真展をあちこち見て回っていると、撮った本人は気づいているかどうか分かりませんが、思わずヒザを打ちたくなるような写真に出会うことがあります。写真の上手い下手は、表面だけを見ていても分かりません。大切なのは写真の中身、写そうとしたものを確実に捉えているかどうかです。露出もピントも正確、構図もいい、プリントもきれいで申し分ない、確かに上手い写真だが、少しも心に響かない、そんな写真が氾濫しています。その一方で、本人には自信がなくても、良い写真が撮れているということはいくらでもあります。