2012年8月23日木曜日

ミサイル問題では日本はどの程度の要求をすべきか

日本に届く危険のあるミサイルは、射程一〇〇〇キロから一三〇〇キロの「ノドン・ミサイル」である。しかし、日本はノドン・ミサイルの配備中止を国交正常化交渉はもとより、日朝正常化の条件にはしていない。もちろん、正常化交渉で話し合う議題にはなっているが、日本に届くミサイルを配備する国とは、国交正常化しないとは言っていないのである。つまり、日本はミサイルについてはあまり脅威とは考えていないことになる。

それなのに、テポドン・ミサイルの発射を理由に制裁措置を行ったのは、実は論理矛盾である。もし、それほど重大な問題であるのなら、当初からテポドン・ミサイルの開発中止を強く要求すべきであった。

実は、ミサイル問題では日本はどの程度の要求をすべきかは、かなり難しい問題である。ミサイル問題は、①開発②テスト③配備④輸出―の四つの問題を含んでいる。このうちどれを問題にするのか、あるいは全ての中止を求めるのかで交渉の内容が変わるからである。もし、日本がこれらの四つの問題全ての放棄を求めれば、北朝鮮はそれに対する対価を要求してくる。具体的には、金銭的補償を求めるはずである。だから、ミサイル問題は多額の資金を払うつもりがあるのなら要求してもいいが、そうでなければやぶ蛇になるだけの問題である。

アメリカは、ミサイル輸出の中止に重大な関心を示し、北朝鮮に中止を求めている。北朝鮮は輸出中止の代償として、一〇億ドルから四〇億ドルの補償を求めている。日本が、アメリカと歩調を合わせミサイルの中止を要求すれば。こうした補償を日本が払わされることになる可能性が高い。だが、ミサイル輸出中止の代償として現金を支払うのは最悪の選択である。新しいミサイルや武器の開発に資金を提供することになるからだ。

ところで、北朝鮮のミサイルはそれほど脅威であるのか。通常爆弾を積んでいる限りは、ミサイルの破壊力は小さい。たいした脅威ではない。また、もし日本に飛んでくるようなことがあれば、日米安保条約を発動し北朝鮮を米軍が総攻撃する方針を明らかにしておけば、抑止力としては十分である。さらに、北朝鮮がミサイル開発を進める限り、日本としては戦域ミサイル防衛(TMD)の開発を進めるとの方針を表明すればいいのである。

こうしてみると、テポドン・ミサイル発射に示した日本の対応は、北朝鮮に自制を求める意味では効果がめったと評価していいだろう。ただ、いたずらに混乱し感情的に騒いだのは問題を残した。